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エゾシカの一般成分の最大の特徴は、低脂質であることです(図1)。この脂質量は、肥満症などの食事療法にしばしば用いられる鶏むね肉やささみと同じくらいの低さです。季節による違いを検討したところ、夏から秋にかけ、たんぱく質と脂質が増加することが確認されました。
さまざまな栄養素を毎日どのくらい摂取すればよいかは、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」に明示されています。脂質は、総エネルギー摂取量に占める割合(脂質エネルギー比率)として、29歳未満では20〜30%、30歳以上では20〜25%の範囲内に収めるよう記されています。ところが、ほとんどの年代において、それは守られていません。「国民健康・栄養調査」は、とくに30歳代の男性と30〜50歳代の女性が脂質を過剰に摂取していると報告しています。私たちは、脂質の摂取量を控える努力をする必要があるのです。
エゾシカ肉の脂質は、量の少なさのみならず質の良さもまた魅力です。脂質の質を決定づけているのは脂肪酸という成分ですが、エゾシカ肉では、必須脂肪酸のリノール酸をはじめとする多価不飽和脂肪酸が、一般的な畜肉よりも高い割合で含まれていました。獣肉としては、とてもめずらしいことです。幼獣には、脂質代謝改善作用をもつとして注目される共役リノール酸(CLA)が、成獣よりも多く含まれていました。
エゾシカ肉には、鉄が多いという特長もあります。私たちの調査では100g中に6.0mg含んでおり、鉄が多いとして知られる食品を上回っていました(図2)。鉄という元素は、私たちの体内にわずか数グラムしか存在しませんが、ヘモグロビンとして酸素の運搬にかかわるほか、エネルギーを作り出す経路の酵素の成分となるなど多くの代謝反応にも関与しています。「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、月経のある女性の推奨量は、年齢によって異なるものの10.5〜14.0mg/日と設定されています。しかしながら、摂取状況は1日あたり7mg程度にとどまっており、推定平均必要量すら満たされていません。一見すると健康そうであっても、じつは貧血予備軍であるという女性は大勢います。女性にこそ、エゾシカ肉を積極的に食べてほしいものです。
解説 岡本匡代氏
釧路短期大学生活科学科、動物資源利用研究室
(C)Okamoto Masayo 2011
ポスター「エゾシカ肉の栄養成分」(PDF)をダウンロードのうえ、ご活用いただけます。こちらから