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シカ肉は優等生

岡本匡代 釧路短期大学生活科学科

 私は食品学という視点からエゾシカを見ている。食品学とは、対象の栄養成分を科学的に明らかにしようとするものだ。この場をお借りして私たち研究グループの成果の一部を紹介したい。

分析者泣かせ?のユニークさ

 「何の肉に似ているの?」と聞かれたら「四つ足らしくない」と答えることにしている。高たんぱくで低脂質という特長は鶏のささみのようで(グラフ)、鉄や銅などミネラルの豊富さはレバーや貝と肩を並べるほど。脂質の質は青魚や植物にも似ている。脂質量が少ないだけにコレステロールも低い。 実験を始めるにあたっては、結果におよその見当を付けておくものだ。それだけに、想定外の結果であったときには自身の腕を疑ってブルーな気持ちになる。そう、研究開始当初はずいぶん落ち込んだのだ。実はそれこそがエゾシカ肉らしさだったのだが。

エゾシカ肉などの一般成分

季節変動は野生のあかし?

 各個体のデータがあまりに不揃いだったことも不安の種だった。それが季節変動であると統計学的に判断されたのは、ややしばらく後のことである。夏になると水分が減り、たんぱく質が増加していた。全脂質の脂肪酸成分では、パルミチン酸(16 : 0)が著しく増加した一方で、リノール酸(18 : 2, n-6)やアラキドン酸(20 : 4, n-6)は減少していた。さらに詳しく調べたところ、中性脂質画分での変動が大きいことが明らかになった。

栄養たっぷりな“バンビ”

 成獣と幼獣の比較にも興味をそそられた。少なくとも脂肪酸成分には違いがあるようである。とくに生後間もない幼獣のそれは、共役リノール酸(CLA)をはじめ多価不飽和脂肪酸に富んでいた。

献立のユーティリティプレーヤー

 おしまいは栄養士らしくまとめてみたい。エゾシカ肉は、近年の日本人の食生活に好適な食材と思われる。過剰に摂取しがちなものは少なめで、不足しがちなものは富んでいる。献立作成においても便利な食材なのだ。当たり前に流通・消費されるようになったとき最も喜ぶのは、現場の栄養士たちかもしれないと思っている。


おかもと・まさよ 釧路短期大学生活科学科助手、管理栄養士
(C)Okamoto Masayo 2005

エゾシカ協会ニューズレター第18号(2005年4月1日発行)から転載